オルタードスケールの表記は、世界ではどう考えられているのか?
- Hirofumi Okamoto

- 7月30日
- 読了時間: 3分
ジャズを勉強していると、一度は疑問に思うことがあります。
例えば、G7に対して使うオルタードスケール。
理論的には A♭ Melodic Minor Scale の第7モードです。
そのため、多くの教則本では、
G – A♭ – B♭ – C♭ – D♭ – E♭ – F
と表記されています。
Melodic Minor Scale の構成音をそのまま並べれば、この表記が最も理論的に整っています。
ところが、私は以前から少し違和感を持っていました。

G7というコードで考えているのに、なぜ3rdが「B」ではなく「C♭」なのだろう。
もちろん理論的には同じ音です。
しかし、実際に演奏する立場になると、「B」と見えた方が、コードとの関係が直感的に理解しやすいのです。
同じことは、A Altered Scaleにも言えます。
一般的には B♭ Melodic Minor Scale の第7モードとして考えるので、
A – B♭ – C – D♭ – E♭ – F – G
という表記になります。
しかし、A7というコードを中心に考えるなら、私は「D♭」よりも「C♯」と表記したくなります。
コードトーンである
A – C♯ – E – G
が見えた方が、演奏中の思考がずっと自然だからです。
では、世界ではどちらが主流なのでしょうか。
現在のジャズ教育では、バークリー音楽大学をはじめ、多くの教育機関が「親となるMelodic Minor Scaleとして表記する」という方法を採用しています。
つまり、
G Altered = A♭ Melodic Minor
A Altered = B♭ Melodic Minor
という考え方です。
この方法には大きな利点があります。
Melodic Minorの7つのモードの関係が崩れず、理論体系として非常に美しいのです。
一方で、実際のプロミュージシャンの現場では、必ずしもその表記だけが使われているわけではありません。
演奏家は、「今鳴っているコード」を基準に音を認識することが多く、
G7であれば、
G – A♭ – B♭ – B – D♭ – E♭ – F
と頭の中で捉えている人も少なくありません。
つまり、「C♭」ではなく「B」と考えるのです。
その方が、
3rdが一目で分かる
コードトーンとの関係が明確になる
アドリブ中の判断が速くなる
という実践的なメリットがあります。
クラシック理論では、「一つの音階では同じアルファベットを二度使わない」という原則があります。
そのため、
G – A♭ – B♭ – C♭ – D♭ – E♭ – F
という表記が正統です。
しかしジャズは、理論を学ぶためだけの音楽ではありません。
その場で音を選び、瞬時に反応する音楽です。
だからこそ、演奏現場では「読みやすさ」や「コードとの関係性」を優先した表記も広く使われています。
私は、この二つは対立するものではなく、役割が違うだけだと考えています。
理論を学ぶ段階では、Melodic Minorとの関係を理解するために、正統的な綴りを知ることが大切です。
しかし、演奏するときには、コードとの関係が瞬時に見える表記の方が実践的です。
ですから、私自身が教材を作るのであれば、
理論編では世界標準の表記を採用し、
実践編ではコードトーンが見えやすい表記を採用します。
例えば、
理論表記
G – A♭ – B♭ – C♭ – D♭ – E♭ – F
実践表記
G – A♭ – B♭ – B – D♭ – E♭ – F
このように併記することで、「理論」と「演奏」の両方を自然につなげることができると思っています。
私は、音楽理論とは「正しい名前を覚えること」が目的ではなく、「自由に音楽を演奏できるようになること」が目的だと考えています。
その視点に立つなら、理論的な美しさと演奏上の分かりやすさ、その両方を大切にすることが、これからのジャズ教育には必要なのではないでしょうか。

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